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12月の保良ゲート前

【12月の保良ゲート前】

 

 防衛省は2020年度内の弾薬庫運用開始を目指しているらしい。

 

  2020年12月。宮古島・保良の弾薬庫/基地建設工事は、年末の追い込みということか、非常に作業を急いでいる様子だった。

 年末…、21日(月)は33台、22日(火)は42台、23日(水)は30台、24日(木)は38台、25日(金)は28台、26日(土)は27台、28日(月)は98台、29日(火)は38台…もの車両(※台数は数えられた数)による資材等の搬入・搬出がおこなわれた。28日は、ゲート前抗議参加者4人で約100台もの車両と対峙したことになる。

 12月20日(日)、部落の役員のみを集めて防衛局の説明会が行われた。(このことは報道されていないと思う。取材もなかったらしい。)沖縄防衛局は、工事が遅れているため、今後、日曜日も工事を行う、夜間も工事を行う、と宣言した。主として屋内工事を行い、ダンプの出入りや重機の使用はしないとのこと。)

 あたり前の平穏な生活と、生きる権利をまもるために、そして平和のために、毎日毎日早朝から座り込み、一分一秒でも工事を遅らせることに希望をつなげてきた地元住民を前にして、防衛局はそう宣言した。

 

 現場の状況は、3月までに完成するようには見えないという。3棟計画されている弾薬庫のうち、1棟はまだ着工の目処も立っていない。しかし2棟だけ完成させて、フェンスや門を設置するなど基地としての体裁だけでも整えて、2020年度内の運用開始ーミサイル弾配備を防衛局は狙っているようだ。基地周囲に外灯を設置する工事も始まっている(1月22日現在)…。

 

 

 これまでの米国のエアシーバトル構想やオフショアコントロール戦略では、在日米軍はグアム以東に退避し、初期段階の中国のミサイル飽和攻撃をやり過ごす、ということになっていた。

  2019年5月、米軍の新戦略が提示された。「海洋プレッシャー戦略」(CSBA:戦略予算評価センター)。ここで、「米軍を主要な地域に前方配置する」 ことになった。「グアム以遠への撤退戦略」から「前方配置戦略」へ。「第1列島線にインサイド部隊が確立した防衛バリアと、それをバックアップする第2列 島線〜西太平洋にアウトサイド部隊による〝縦深防衛〟ラインを形成」するのだという。琉球弧を中心とする第1列島線上に、陸上自衛隊の地対艦/地対空ミサ イル部隊とともに、米陸軍や米海兵隊の地対艦ミサイルや中距離弾道ミサイルなどが配備されることになる。

 

「…この戦略は、第1列島線内の島々を中国の攻撃に耐えうる防衛上の要所に変えることで、地域をアメリカに有利に利用するものである。」※

 

「これらの島々に設置された移動式ミサイルは、地表の複雑な地形の中で地上の標的を見つけることに関連した課題のため、中国が位置を特定し、追跡し、破壊することは困難であろう。」※

 

 … 琉球弧などの島々が、米国のために防衛上の要所に変えられ、利用されることが明記されている。そして島々がミサイル戦争の戦場となることが、正に「捨て石」となることが、はっきりと想定されている。琉球弧の島々は日米共同のミサイル戦争拠点となってしまう。日米の南西シフトは、海峡封鎖に留まらない、中国全土を射程に収める先制攻撃態勢にエスカレートしつつある。

※小西誠さんの note、『米軍の最新戦略「海洋プレッシャー戦略」の全訳』より

 …中国とロシアは2019年11月の政府高官会議で、米国が日本などへの中距離ミサイル配備に踏み切った場合には軍事的な対抗措置を取るべきだ、との認識で一致したという…。(2020年12月30日、読売新聞)

 

 

 

 自衛隊の南西シフト態勢の主力は、地対艦ミサイル部隊とされる。島々へのミサイル配備の目的は「尖閣防衛」ではなく、海峡を封鎖し中国包囲網をつくること。

 現行の12式地対艦誘導弾の射程は約200km。これが石垣島・宮古島・沖縄島・奄美大島に配備されると、「チョークポイント」とされる宮古海峡(公海)をはじめ、琉球弧上の海峡のほぼ全域が射程内に収まることになる。しかし、自衛隊の大軍拡はそれだけで収まりそうもない。

 

「国産トマホーク」開発へ 射程2千キロの新型対艦弾 12式は1500キロに延伸

                                            (2020年12月29日、産経新聞)

 

 現在開発中の「日本版トマホーク」と言われる地対艦誘導弾の射程が、約2000kmにも及ぶという。米国の巡航ミサイル「トマホーク」の射程1600kmを上回ることになる。地上発射だけでなく、艦船や戦闘機からも発射、統合運用される計画。

 12式地対艦誘導弾の射程は、当面は900kmほどに延ばし、最終的には1500kmを目指すという。

 

 この話が石垣・宮古・奄美のミサイル基地着工前に出ていたら、どうなっていただろう?…中国本土を直接攻撃できるミサイルを各島に分散配備するのだと予め分かっていたら、基地建設計画は中止に追い込まれていたのではないか。情報はいつも小出しで(奄美ではミサイル部隊配備のことすらほとんど隠されていた)、既成事実が出来た後でどんどんとんでもない情報が追加されていく。

 どこまでエスカレートするのか?

 

 石垣島のミサイル基地と宮古島保良のミサイル弾薬庫/基地が完成し、各島のミサイル部隊の運用態勢が整った時点で、琉球弧の島々は一触即発の戦争態勢下に置かれることになる。常時隣国を挑発し、いつでも戦争を始めることができる、いつでも戦争が始まるかもしれない、そういう状況の中で、更に、各種新型ミサイルが開発・配備され、射程が延伸され、米軍のミサイルも配備されていく。際限のない軍拡競争が続き、緊張が更に高まっていく…。

◀研究開発中の「島嶼防衛用高速滑空弾」▲

「早期装備型」は2026年度頃、「性能向上型」は2028年度以降に配備する計画。


▼防衛装備庁、解説資料『研究開発ビジョン 多次元統合防衛力の実現とその先へ/スタンドオフ防衛能力の取組』より

 2020年3月31日

 

 現在、石垣島に軍事基地は無い。陸自ミサイル部隊は配備されていない。ミサイル基地建設工事は、造成工事も終わっていない。(防衛省は2023年度末までに部隊配備すると目標を決めた、と12月28日琉球新報)

 宮古島には2020年3月に陸自ミサイル部隊が配備されたが、はりぼてに過ぎない。保良のミサイル弾薬庫/基地はまだ出来ていない。弾薬庫が出来ない限りは、ミサイル部隊は機能しない。

 奄美大島には2019年3月に陸自ミサイル部隊が配備されたが、地対艦ミサイル部隊の配備された「瀬戸内分屯地」内の地中式巨大ミサイル弾薬庫はまだ完成していない(2024年完成の計画)。ミサイル部隊の本格的運用が始まったとは言えない。

 沖縄島にはまだ陸自ミサイル部隊は配備されていない。

 馬毛島では海を壊す海上ボーリング調査が始まったが、馬毛島基地化はまだ計画の段階に過ぎない。

 

 今の、この段階で、琉球弧の軍事化を止めなければならない。これ以上島々を痛めつけることを、許してはいけない。島々を痛めつけること、それを許すことは、私たちが自ら平和を放棄することと、おなじことだ。

 


 

 うたうたいのFujikoさん(埼玉県在住)は保良ゲート前行動のSNSグループに参加して、ほぼ毎日、「保良だより(遠隔リポート)」を、保良の方々の許可を得てfacebookとtwitterに発表しています。

 ↓以下、「保良だより」を〝毎月第一土曜日の島じまゆんたく〟(ここのところ中止が続いていますが…)でスライド上映するために12月分をまとめたものです(原文はFujikoさん/編集は石井杉戸)。

 


























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