【 2021年 1月の保良ゲート前】
▲「完成間近」と言われる2棟の弾薬庫。残り1棟は未着手。(2021年2月2日撮影)
人類は、社会をつくって暮らしてきた。他者と共存する仕組みを考えてきた。人数がおおいに増えて、おおきなあらそい事をくり返したり、環境を破壊したりするようにもなった。いちぶの者の利益のために、おおぜいの者が支配されるような仕組みが出来上がったりもした。しかし多くの人びとは、人が人を支配する社会ではなく、人が人を尊重する社会、他者と共存できる社会、平和で、ほんとうの意味での持続可能な社会をつくることを願い、模索してきたはずだ。
たとえば、民家のそばにミサイルを置かない、決して、人びとの暮らす土地にミサイル弾薬庫を造ったりなんかしない、…人類は、そういう社会をつくってきたのではなかったか?
国際法※を持ち出すまでもなく、保良に造られようとしている弾薬庫は、私たちの社会で共有されるべき原則に反する。こんなことが許されるような社会に価値は無い。保良だけではない。一連の「南西諸島自衛隊配備」が、この原則に反している。
島々への自衛隊配備は、島を守るためのものではない。島々を戦争態勢の最前線基地に仕立て上げ、国を守るための防波堤として、戦場の候補地として利用するというものだ。ただしここでいう「国」には、日本全国に暮らす人びと・私たちは含まれない。それは現在通用しているにすぎない狭い意味での国家の体制であって、権力や利権の構造(日米安保体制、対米従属利権構造など)と言い換えた方がよいかも知れない。
権力に属するすべての軍隊は、その国籍を問わず、人びとの味方ではない。人が人を支配する社会において、支配する側を守るために、人びとの命が弄ばれている。このまま琉球弧の軍事化を許して良いのか。私たちの、社会のあり方が問われている。
※国際法:ジュネーヴ条約など
「紛争当事者は、実行可能な最大限度まで、次のことを行う。…(b) 人口の集中している地域又はその付近に軍事目標を設けることを避けること。(c)自国の支配下にある文民たる住民、個々の文民及び民用物を軍事行動から生ずる危険から保護するため、その他の必要な予防措置をとること。」(『1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する 追加議定書1』第58条より)
※
「とりあえず年度内にあわせて体裁だけでも整えようとしているようにも見えます。」(薫さん、1月22日)
「2020年度末のミサイル配備はあるか〜ないか…、今まで以上に注視したいと思います。」(薫さん、1月27日)
「弾薬庫だけは何としても年度内に仕上げたいようです。」(薫さん、1月30日)
「弾薬庫3棟建設の筈が2棟しか出来ず、覆道射撃訓練場も手つかずなのに、主要ゲート近くの門を建造し車輌の出入りをわざわざ不便にしている。
〝弾薬庫完成しました〟というお披露目を来年度早々にもしたいのだろうか?
周辺フェンスも手つかず、外灯もまだ。構内未整備。お披露目を急ぎ、それで反対市民の意志を挫こうとでもいうのだろうか?未取得地も係争中なのに。だが、決して負けない。」(博盛共同代表、1月28日)
基地が未完成でも強引に開設して自衛隊配備の既成事実化を図る、ということは与那国島でも奄美大島でも宮古島(千代田)でも行われてきた。
2021年1月の保良では、集落側に道路と出入口を造るための伐採作業がはじまった。基地周辺の電気配線工事、外灯設置作業がはじまった。門の建造がはじまった。弾薬庫はほぼ土に埋まり、芝植えもはじまった。2020年度内になんとか2つの弾薬庫を完成させよう、なんとか見てくれだけでも整えよう、という意図が窺える作業が目立ちはじめた。今年度内、あるいは来年度早々の開設/運用開始に向けて、防衛省は必死のようだ。
保良の弾薬庫(基地)の開設/運用開始とは、宮古島にミサイル弾体が持ち込まれること、そしてミサイル戦争態勢が発動することを意味する。それ以前と、以後とでは、この国のあり方が大きく変わってしまう、そういう出来事になるかも知れない。
保良のゲート前では、日曜以外毎日、住民による抗議行動が行われている。あと約2ヶ月で開設してしまうかもしれない…そういう状況下にあっても、1分でも1秒でも工事を遅らせようと必死に抵抗する姿は変わらない。なんどもくり返すけれど、なぜ、自分たちが暮らすたいせつな場所が戦争拠点にされるという人びとだけが、大きな国策に立ち向かわなければならないのか。
保良集落には181世帯・312人、七又集落には27世帯・46人が暮らしている。高齢者が7割以上を占めている。弾薬庫から最も近い民家までの距離は推定約200メートル。2つの集落の全世帯は、弾薬庫から1km圏内に位置する。弾薬庫には、地対艦ミサイルなど、軍艦を沈めるような強力な破壊力をもつミサイル弾体が置かれる計画。いずれは開発中の各種新型ミサイルも置かれるだろう。このような人命無視の弾薬庫計画に対し、当たり前の平穏な暮らしを守ろうと、住民はたたかっている。それは、国がおおきな間違いを犯そうとしていることにたいする抵抗でもある。この場合の「国」には、日本全国に暮らす私たちが含まれる。私たちはおおきな間違いを犯そうとしているのだと思う。だから私たちは、止めなければならない。
うたうたいのFujikoさん(埼玉県在住)は保良ゲート前行動のSNSグループに参加して、ほぼ毎日、「保良だより(遠隔リポート)」を、保良の方々の許可を得てfacebookとtwitterに発表しています。
↓以下、「保良だより」を〝毎月第一土曜日の島じまゆんたく〟(ここのところ中止が続いていますが…)でスライド上映するために1月分をまとめたものです(原文はFujikoさん/編集は石井杉戸)。
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