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2021年 6月の保良ゲート前

2021年 6月の保良ゲート前】

 

6月2日(水)、弾薬が搬入された。

 

 保良の弾薬庫に、初めて、弾薬が運び込まれた。吉田陸上幕僚長は会見で弾薬の種類も実際に弾薬を搬入したのかどうかも答えなかったが、2019年に住民を騙して宮古島駐屯地に保管されていた中距離多目的誘導弾や迫撃砲弾等が搬入されたと推測されている。琉球弧ミサイル戦争態勢/海峡封鎖態勢の主力であるミサイル部隊が使用する地対艦・地対空ミサイル弾体はまだ宮古島に運び込まれていない。(8月24日現在)

 

(追記▶)8月3日、岸防衛相は与那国島に陸自電子戦部隊配備の方針を表明。同日、防衛省は2022年度内の石垣島の駐屯地開設を検討しているとの報道。8月20日、防衛省は2023年度をめどに沖縄島の陸自勝連分屯地に地対艦ミサイル部隊配備の計画をうるま市に伝えた。同日、自衛隊は宮古島・保良に地対艦・地対空のミサイル弾体を海自輸送船を使って搬入する方針で、8月28日を軸に調整中だと報道された。

 ミサイル搬入後の住民の安全に関する諸問題は、ないがしろにされたままだ。

 

 演出された中国脅威論を追い風にして、「現代版八紘一宇」とでも言うべき「自由で開かれたインド太平洋」をスローガンに、「第一列島線」と名付けられた東アジアの美しい島々を使って、そこで暮らす人びとや島々の自然を踏みつけながら、日米の対中国戦略に基づいた覇権と利権のための軍事的対立構図が描かれようとしている。

 琉球弧の連なる島々に軍事的緊張が圧縮され、ミサイル戦争/島嶼戦争の即応態勢/臨戦態勢がとられ、そこが戦場になることを視野に入れた軍事行動が絶えず、恒常的にくり返される。果てしない軍拡競争が続く。東アジアの平和は限りなく遠ざかっていく。…そのような態勢が本格的に動き出す日程が、2023年度、2022年度…、そして2021年8月28日…と、あらわれはじめた。

 

8月28日、ミサイル搬入を許すな!

 

 

(追記2▶)座喜味市長、港使用不許可の英断! 当面の間、自衛隊による宮古島へのミサイル搬入はなくなった。ただし不許可の理由はコロナの感染状況。コロナに関係なく、市民の安心と安全のためにミサイル搬入を許さないという姿勢を期待したい。

「宮古島市長、弾薬搬入で港使用を不許可 感染防止理由、国に通達」(8月26日 琉球新報)

 

 

 吉田圭秀陸上幕僚長は3日の記者会見で、弾薬を搬入したか問われたが「輸送の安全確保の観点から答えを控える」と述べるにとどめた。

 宮古島への陸自部隊配備は「市民の安全も含めた南西地域の防衛体制の強化にとって不可欠」と説明。地対艦誘導弾を配備する意義については「南西地域の防衛体制の抑止力、対処力の強化に直結する」と強調した。

…6月4日 沖縄タイムスより

 

  2日に陸上自衛隊が宮古島市へミサイルなどの弾薬の搬入を始めたことに関し、陸自トップの吉田圭秀陸上幕僚長は3日の会見で「初動対処体制を整え抑止力、対処力を維持することは宮古島の安全を確保する上で必要不可欠だ」と述べた。搬入の必要性を改めて強調した。

 実際に搬入したかや、搬入した弾薬の種類については、輸送の安全や能力に関わるとして回答を控えるとした。

…6月4日 琉球新報より

 

  宮古島平和ネットワークの下地博盛共同代表らは7日、嘉手納町の沖縄防衛局に田中利則局長を訪ね、2日に宮古島市の陸上自衛隊保良訓練場に搬入したミサイルなどの弾薬配備撤回を求めた。夜間の空砲射撃訓練中止なども要請した。

 田中局長は、ミサイル弾薬の宮古島での保管について「抑止力・対処力を維持する上で必要」とし、「これまでの方針に変わりはない」と述べた。

…6月8日 琉球新報より

 

 

 宮古島市に陸自宮古警備隊から連絡(電話)が入ったのは、2日…搬入直前の午後1時過ぎだったという。その概要は「①本日中に弾薬搬入および保良火薬庫への運搬を実施 ②安全確保の観点から、時間やルートについては明らかにできない」(6/3 宮古毎日新聞)だった。宮古島市前市長の下地敏彦容疑者が陸自宮古島駐屯地の建設用地取得をめぐる収賄容疑で逮捕された翌日の5月13日に沖縄防衛局が宮古島市役所を訪れ「5月17日以降に保良弾薬庫に弾薬を搬入する」と伝えて以来、座喜味市長は、市民の生命・財産を守る立場から日程・ルートなどの情報の公開・具体策を示すことを含めた安全面への最大限の配慮を求めてきた。情報の開示がなければ住民は安心しようがない。住民に情報を公開しないことが安全確保だという防衛省・自衛隊の理屈は、ちいさな島の中で、住民の安心できる暮らしと自衛隊の活動はそもそも両立し得ないのだということを、改めて、自ら証明している。

 「その日」はいつ来るのだろうか?、5月17日から約2週間、住民は不安な日々を過ごしたことだろう。その間、沖縄県内の主要海運業者が弾薬の輸送を行わないと防衛省に申入れたという、嬉しいニュースもあった。28日の超党派による省庁ヒアリングでは、「宮古島市から、国民保護計画が改定されるまでミサイル搬入を待って欲しいという要請があったら…」との質問 に、防衛省は「そういうご意向があれば、尊重するのは当然」だと答えた。弾薬搬入は止められる、という希望が見え始めたその矢先…

 6月2日、住民の希望をあざ笑うかのように、あるいは海運業者による拒否への「腹いせ」のように、空輸(自衛隊ヘリ)で、弾薬が宮古島に運び込まれた。

 

 弾薬等を載せた自衛隊の輸送ヘリCH-47は、14時過ぎに一機目、15時45分に二機目が野原の空自基地に着陸した。空自基地正門前では、10数名の住民が抗議集会を行った。日が暮れかかるころ、7台程のパトカーが集まってきた。弾薬を積んだトラックが基地から出てくると、住民たちは立ちはだかり、座り込み、スクラムを組んで寝転がり、身体を投げ出して、トラックを止めたという。警察が弾薬運搬に協力した。警官が両手両足を抱えて住民たちを排除するまで、一時間以上もの間、住民たちは弾薬運搬車両を止めた。

 19時55分頃に空自基地前を出発した車両4台は、保良へ向かった。北側ゲートからの侵入を試みたが住民の抵抗にあい、道幅の狭い北ゲートからの搬入を諦めて南側の正門へ向かった。

 保良の正門前でも午後から抗議集会が行われていた。日が暮れかかると、続々と住民が集まってきた。そこに空自基地前から駆けつけた住民が加わった。

 20時30分パトカー3台が到着。続いて、危険マークをつけた4台の運搬車両が、保良の基地正門前に到着した。21時20分頃、住民たちの抗議の声の中、警察に守られた自衛隊の運搬車両が、基地内へ入っていった。21時55分、南寄りの弾薬庫に弾薬等が搬入された。住民たちの抗議行動は23時頃まで続いた。

 

 

 防衛省・自衛隊は、宮古島への陸自配備に関しても、たくさんの噓を重ねてきた。上に引用した弾薬搬入に関する新聞記事には、防衛省・自衛隊の根本的な噓、…最も許してはならない、しかし大手メディアが決して噓とは書かない噓、人びとの命に関わる噓が、含まれている。防衛省・自衛隊が「抑止力、対処力の強化」と呼ぶものは、宮古島の安全を確保しない。市民の安全を著しく損なう。それにしても、「抑止力、対処力」という言葉が無制限に蔓延るのを、これ以上放置してはならないと思う。

 

 憲法9条下での軍備を正当化する概念として、かつて「専守防衛」という言葉が使われた。いつの間にかそれは、「抑止力」という言葉に取って代わっていた。「拒否的」だとか「懲罰的」だとかに分類されもする「抑止力」は、その言葉の持つ独善的性格を無視さえすれば、敵基地攻撃能力を含むあらゆる軍備を「防衛力」として正当化し得る魔法の言葉だった。そしてよく見ると、「抑止」という言葉は「対処」という言葉と常にセットで使われていた。

 いま、琉球弧の島々を使ってつくられているこの「抑止〜対処」態勢は、即応/臨戦態勢(抑止)から実際の戦闘(対処)にシームレスに移行していく、というものだ。

 琉球弧の島々を「最前線」と定め、米国の中国包囲戦略に基づいた、日米共同の「抑止〜対処」態勢をつくる。それは東アジアの秩序を、厳しい軍事的緊張に依存しなければ成り立たない構造に変えていく。その中で、破滅的な全面戦争を回避するために(実際に回避できるかどうかは別として)、ガス抜きとしての限定戦争が許容される。

 南西シフトにおける「抑止〜対処」態勢は、軍事的緊張をあらかじめ前提として、緊張の上に乗った安定(軍の論理による平和)を保つための、そして安定が崩れた時に「最前線」での島嶼戦争を戦うためのものだ。…このような、限定戦争をも組み込まれた東アジアの「抑止〜対処」態勢による秩序をつくるために、当然のように、島々の住民は危険に晒されようとしている。

 

 


 うたうたいのFujikoさん(埼玉県在住)は保良ゲート前行動のSNSグループに参加して、ほぼ毎日、「保良だより(遠隔リポート)」を、保良の方々の許可を得てfacebooktwitterに発表しています。

 ↓以下、「保良だより」を〝毎月第一土曜日の島じまゆんたく〟でスライド上映するために6月分をまとめたものです(原文はFujikoさん/編集は石井杉戸)。

 

 


























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