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「アセス逃れ0.5ha着工」強行から3年…[石垣島 平得大俣ーミサイル基地建設現場の現状]と、2022年を琉球弧最前線基地化中止の年にしよう!②

「アセス逃れ0.5ha着工」強行から3年…[石垣島 平得大俣ーミサイル基地建設現場の現状]と、

2022年を琉球弧最前線基地化中止の年にしよう!②

 

「どこに訴えれば届くのか」 住民らやり場のない怒り

…2019年3月1日 八重山毎日新聞 一面より

 

 2019年3月1日、石垣島 平得大俣で陸自ミサイル基地建設工事が着手されてから、もうすぐ3年。そして、約一年後(2022年度内)には基地の「開設」が目論まれている。

 

 この場所で自然を破壊し基地を造り運用することが、石垣島の生態系や農業や人びとの生活にどのような影響をもたらすのだろうか。沖縄島で、米軍基地を造るために農地を奪われ、開拓移民としてこの土地に入植し苦労して農地を作ってきた人びと、その畑を引き継いでいる人びと…この土地をよく知る人びとは、本当に深刻にこの影響を懸念している。しかし、まともな調査も配慮もないまま、ここまで進んでしまった。

 

 また、「基地のない平和な島」を「防衛の空白地帯」と呼び琉球弧全体の軍事要塞化を進める防衛省は、石垣島に基地を造ることの軍事的な意味合いを、住民に正直に話していない。

(追記:これを書いている途中で、ロシアによるウクライナ侵攻が起こりました。ロシアの侵攻に抗議します。NATOの拡大と、あらゆる軍事挑発にも抗議します。全責任はロシアにあるとする米大統領にも抗議します。軍事緊張を利用する全ての勢力に抗議します。そして改めて、琉球弧軍事化の危険性を思い知らされました。)

 

 

2022年1月1日の平得大俣 基地建設現場 (写真:©基地いらないチーム石垣)

↑主要施設が集中する元ゴルフ場ジュマール部分。

画面奥の射撃場計画地は昨年末に森林が伐採された元市有地。

 

←2019.2.7 防衛省「住民説明会(説明資料)」より

↑畑のギリギリの所まで、樹木の伐採が進んでいる。

 

2022年1月18日の平得大俣 基地建設現場 (写真:©基地いらないチーム石垣)

↑雨に霞む於茂登岳と、山裾に広がる基地建設現場。

赤丸は「造成工事でなぎ倒された木々の残骸が集積されている。最近、ダンプによって工事区域外へと搬出されている。」(石垣島在住のUさんfacebook記事より、2022.1.18)

 

2022年2月2日の平得大俣 基地建設現場 (写真:©基地いらないチーム石垣)

山裾の基地建設現場と、南側に広がる農村風景。この下流域で、生活用水と農業用水(石垣島で使う農業用水の75%)が汲み上げられる。

弾薬庫計画地での工事も始まっている(4棟計画。クレーンが立っている辺り)。弾薬庫から開南集落(道路の左側、画面中央辺り)までの距離は、わずか350〜400m。


 

わずか0.5ヘクタールの着工だった。

 2019年3月1日、石垣島平得大俣で、陸自基地建設工事が着手された。敷地(計画地)面積約46haのうち、わずか0.5haの着工だった。

 

一定規模以上の土地の造成を伴う事業については、事業の実施に伴い、動植物や景観等への著しい影響が懸念されることから、対象事業として「土地の造成を伴う事業」(施行区域面積が20ha以上のもの)(特別配慮区域内で実施されるものは10ha以上のもの)を追加した。
…資料『沖縄県環境影響評価条例及び同施行規則の一部改正について』2018年7月 沖縄県環境部環境政策課環境影響評価班


 沖縄県の環境影響評価条例(アセス条例)が改正され、「土地の造成を伴う事業であって、施行区域の面積が20ha以上のもの」は全てアセスの対象事業と なった。「大規模な土地造成を伴う事業に関して、開発による環境への影響は、事業種を問わず同等であるが、事業種によって環境影響評価条例の対象とならな い事業があり、事業間の公平性が保たれていない」(同資料)という不備を是正するための改正だった。2018年10月に施行されたが、2019年3月31日以前に実施した事業は適用外とする「経過措置」が取られた。
 環境影響評価制度とは「事業者自ら」が「環境に配慮したより良い事業計画を作り上げていくための制度(同資料)だが、防衛局は陸自配備推進派市議所有のゴルフ場ジュマールの土地約13haの法外な値段 での売買・賃貸契約を締結したばかりで、大半の用地取得の目処さえ立っていない状態であったにもかかわらず、アセス逃れのために、違法開発によって造られた疑いのあるゴルフ場を引き継いだ防衛局は、進入路部分 0.5haの着工を強行した。
 アセスについて防衛省は「県条例の対象外なので条例に基づくアセスは実施しないが、現況調査を行った後、可能な限り対策する」と説明したという(八重山 毎日新聞 2019.2.14)。「県条例の対象外」になるために、独自の「現況調査」も終わっていないのに「着工」するのではないのか。それを「県条例の対象外なので…」と言う。

 

「県条例のアセスの対象ではない。アセス逃れではなく、今年度に予算を計上している。現況調査を行いながら対策をとっていく」(周辺4地区住民との面談で沖縄防衛局/八重山毎日新聞 2019.2.28)


「水源になっているという意見もあるが、さまざまな対策で大きな影響は与えないと考えている」「本年度中に工事に着手したいので県改正条例の対象とはならないが、環境を無視するわけではない」

(周辺4地区の住民対象の説明会で沖縄防衛局/八重山毎日新聞 2019.2.8)


 沖縄県の最高峰であり、石垣島の生命の〝おおもと〟の山、水源の山である於茂登岳。平得大俣の基地計画地とその周辺は、地下水の「涵養域」と言われる。於茂登岳の恵みが島中に程よく行き渡るための、調節をする場所。豊富な湧き水が、多種多様な動植物の楽園をつくる。旧ジュマールにあった池は、工事のためにいくら水を抜いても、すぐに湧き水が溜まった。工事が始まった頃、雨の降った翌日は、高台の基地建設現場から流れ出る水は敷地に沿った道路で小川となり、一日中途切れることなく流れていた。元市有地の新たに森林が伐採された場所でも、水が湧き出し池になっているのが確認された。

 於茂登岳は、沖縄県では珍しい花崗岩類の岩体で構成される山だという。上の写真でも、巨大な岩石がゴロゴロと出ている様子がよく分かる。石垣島は「岩石の博物館」と呼ばれているそうで、非常に複雑な地質から成り、基地計画地も、地層の分布上微妙な場所にあるという。

 このような場所で、森林がなくなったらどうなるのか、土地の形状が変わりコンクリートで固められたらどうなるのか、排水を溜める池をつくったらどうなるのか、水の流れが変わったらどうなるのか、風の流れが変わったらどうなるのか、地下水が汚染されたらどうなるのか、今でも不足している水が足りなくなるのではないか、今までの自然の調節機能が損なわれたらどうなるのか、自然災害にも脆弱な島になるのではいか。

 地元の方々は、日々変わって行く風景をどのように見ているのだろうか。「さまざまな対策で大きな影響はないと考えている」という言葉を、どのように聞いただろうか。

 

 後世に悔いを残さないために自衛隊配備について市民みんなで考えよう、という石垣市民の呼びかけで始まった「平得大俣地区への陸自配備計画の賛否を問う住民投票を求める署名」(石垣市住民投票を求める会)は、2018年10月31日からわずか一ヶ月の間で1万5千135票集まり、1万4千263票が有効署名と石垣市に認められた。石垣市自治基本条例の定めるところにより、石垣市長は「住民投票を実施しなければならない」ことになったが、実施されないままの着工になった。そして驚くべきことに、住民投票は未だに実施されていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2019年2月28日

      〜3月6日の

八重山毎日新聞

※法外な値段ジュ・ マール楽園 代表取締役 友寄永三氏(陸自配備推進派市議)と国との売買契約書は情報公開請求で公開されたが、金額は黒塗り。しかし収入印紙の額から、13haのうち9haの価格が5億円〜10億円と推定される。これは「宮古島駐屯地」の用地(22ha、元・千代田カントリークラブ)と比較すると、最大で約3倍(面積あたり)の価格になる。千代田カントリークラブは、宮古地区自衛隊協力会の事務局長など要職を歴任した下地藤康氏が経営し、1億数千万円の負債を抱え、競売にかけられ、県が買い取り県営防災公園を造ることが計画されていた。しかし当時の下地敏彦宮古島市長(宮古地区自衛隊協力会名誉会員でもあった)の尽力もあり、国(防衛省)に約7億円(+休業補償など?)で売却された。下地藤康氏と下地敏彦元市長には、贈収賄で有罪判決が出ている。宮古島・保良は売買額は非公開だが、疑惑は尽きな い。

 


 

 一連の琉球弧への陸自基地建設と新部隊配備では、情報はいつも小出しで、既成事実作りばかりが優先されてきた。「警備部隊等を配備する」と強調され、後からミサイル部隊が主力であると判明する、という具合に。敷地面積すら、基地開設後まで公表されなかった島 もある。そして一旦基地が出来ると、なし崩し的に拡大されていく。

 

 石垣市の中山市長(2022年2月現在)※※ は、2018年3月の市長選挙期間に「ミサイル基地なら反対する」と公言した。しかし当選(3選目)後、「ミサイルとは大陸間弾道ミサイルのことで、石垣に配備されるのはミサイルとは言わない」と詭弁を弄した。

 

 今や、石垣島にも配備予定の地対艦ミサイル(12式)の射程は現行の200kmから当面は中国大陸にも届く900kmに、さらに1500kmを目標に延長される計画であることが明らかになっている。

 また、現在開発中の「島嶼防衛用高速滑空弾(極超音速滑空飛翔体)」という大気圏上層に打ち上げられ超音速滑空するミサイルは、2016年に「早期装備型」の実用化、更に複雑な飛び方をする「性能向上型」の開発が進められている。沖縄島・宮古島・石垣島などへの配備が予想される。高速滑空弾の弾頭は、マルチプルEFP(Explosively Formed Penetrator=爆発成形侵轍体)という、衝撃波によっていくつもの貫通弾が成形される仕組みになっている。数発で数百m四方の範囲にある目標を破壊するという、クラスター爆弾のような効果を持つ。

 「日本版トマホーク」とも呼ばれる巡航ミサイルも研究開発が進められることになっている。地上発射だけでなく、艦船や戦闘機からも発射、統合運用する計画で、射程距離の目標は2000km。

 

 2019年5月に米国のCSBA(戦略予算評価センター)が「海洋プレッシャー戦略」を発表して以降、米国は「第一列島線」の島々への部隊配備(「前方配備・前方展開」)の方針を鮮明にしてきた。米海兵隊や米陸軍の地対艦ミサイルや弾道ミサイルが、琉球弧の自衛隊基地に配備される見通しになってきている。

 そして米海兵隊の「遠征前方基地作戦(EABO)」に基づく日米共同作戦策定の推進が、今年1月の「2プラス2」で合意されたと見られる。緊迫が高まった段階で、石垣島や奄美大島など琉球弧の島々に約40ヶ所の臨時の攻撃拠点を置き、日米のミサイル部隊等が共同展開するというもので、琉球弧を戦場として日米で利用する方針がより鮮明に打ち出された。「EABO」に関する日米共同訓練は既に、2021年の12月と今年2月に行われている。

 

 

奄美大島。2016年6月に着工した奄美大島の陸自基地は、建設業界誌掲載の資料から、北部の「奄美駐屯地」は敷地面積28ha、南部の「瀬戸内分屯地」は20haと言われていた。2019年3月31日の開設式典後初めて、奄美駐屯地 50.5ha、瀬戸内分屯地 48haであることが公表された。人目につかない山の中に、森林を壊して造られている瀬戸内分屯地48haのうち、30.6haを占めるのは弾薬庫/貯蔵庫地区。現在山をくり抜いて建設中の5本の地中式弾薬庫は、2024年完成の計画。

※※追記:2022年2月27日投開票の石垣市長選で当選。4期目に入る。

 


 

 琉球弧の軍事化は、どこまでエスカレートするのだろうか。2月24日にウクライナで起こったことは、このまま覇権争いとしての軍拡競争が続けば、軍事衝突/戦争 が琉球弧でも起こってしまう危険性を示した、とも思います。軍事緊張こそが人びとを圧迫し、その一方で「脅威論」と憎悪を拡大する。どちらの勢力が悪いとか、先に手を出すのは向こうだと言い争うのではなく、それぞれが主体的に緊張をゆるめていく努力が必要だと思います。

 石垣島基地建設の中止を!

 2022年は琉球弧軍事化中止の年に!

 

 

2月27日「同様なこと」を「軍事衝突/戦争」に訂正(大国と大国の〝はざま〟で起こった戦争という意図で「同様なこと」と書きましたが、「ある特定の国が別の国を攻撃する」ことを想起させるとしたら本意ではないので、「軍事衝突/戦争」に改めました。)

 

 

 

◯石垣島在住のUさんに写真の使用許可をいただきました。ありがとうございました。

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